ありのままに自己肯定が可能な環境であること
障碍の有無に関係なく成長過程において自己肯定感を持って育つことは本当に大事ですが、違いや間違いを指摘され、注意されたり、叱責される経験をすることの多い発達障碍特性を持つ彼らにとって、これを持ち続けることは本当に難しいです。
それが出来ず、2次障碍で重いうつや統合失調症で苦しむ成人当事者の方たちを本当に多く知るにつけ、そのことの大事さを痛感します。
発達障碍や知的障碍特性を持つ人達は、実はとても自分の気持ちに正直で、自分の欲求や要求に素直です。自分たちが肯定された空間では、周りを気にすることなく、本当にしたいこと、やりたいこと、好きなこと楽しいことに夢中になって取り組みます。迷いのないその姿に、楽しそうなその姿に、こちらのほうが憧れてしまいます。
これがいけないはずはないですよね?
というより、障碍の有無にかかわらず、みんながこのスタンスを持てれば、きっとみんなが生きやすくなり、もっと生活を人生を楽しめるんじゃないかと思うほどです。
変わらなければいけないのは、こちら側のほう・・・でもそれも自分が変化・成長するというより、「そのままでいい、ありのままでいい」と思えるようになるということ。
誰もが自分を肯定し、そう思うことができたら、それぞれがそれぞれでOK!ときっと思えるようになり、それぞれがしたいこと、できることに取り組めるようになっていくのではないでしょうか。
自閉症とは
自閉症は目に見えない。誰も自閉症を見ることはできない。それが私を私たらしめる事の1つである。
自閉症は私の脳の働き方に影響する。脳はいつもスイッチが入っているコンピューターのようなもので、生命と学習活動を維持している。自閉症のために脳の働き方が他の人と違うことがある。
自閉症の脳を持つことは自閉症オペレーティングシステムで動いているようなものである。ほとんどの人は普通のオペレーティングシステムで動いている。
自閉症のために私は世界を特定の方法で経験する。時にそれは他の人と同じだが、時に違ったものになる。自閉症であることは間違っていることではない。
自閉症とはもうひとつの思考方法であり存在のありかたである。
引用:自閉症とは リー・マーカス(元チャペルヒルTEACCHセンター所長)
障害者差別解消法
国連の「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として、全ての国民が、障碍の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障碍を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)が制定されました。
この法律は、障碍のある人への差別をなくすことで、障碍のある人もない人も共に生きる社会をつくることを目ざしており、「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮をしないこと」が、差別になります。
不当な差別的取り扱い
(例)
- 「障碍がある」という理由だけでスポーツクラブに入れない
- アパートを貸してもらえない
- 車いすだからといってお店に入れない
合理的配慮をしないこと
(例)
- 聴覚障碍のある人に声だけで話す
- 視覚障碍のある人に書類を渡すだけで読みあげない
- 知的障碍のある人にわかりやすく説明しない
障害者差別解消法では、役所や会社・お店などが、障碍のある人に「合理的配慮をしない」ことも差別となります。
障碍の特徴とコミュニケーションのポイント
日常生活の中には、障碍者の方にとって、我々の想像をはるかに超えた「困った」事がたくさんあります。その困った場面に遭遇した時、ほんのちょっと勇気をだして応対していただけるよう、障碍の特徴とコミュニケーションのポイントをまとめてみました。
こんなことで困っています
- 相手に言われていることが理解できず、全てのことに「はい」と答えてしまうことがあります。
- 情報が多すぎてわからなくなることがあります。
- 先の見通しを持ちにくいため、変化や予定外の出来事に弱く、対応しきれずにパニックを起こすことがあります。
話を聞くときの対応ポイント
- 安心して話せるように、リラックスした雰囲気を作ります。
- 話すのに時間がかかっている場合でも、ゆっくり待って応対します。
- 断片的な言葉からでも、相手の状況、気持ちなどを推測し、話の内容を確認します。
- 大きな声を出しているときには、小さめの声で話しかけるとよい場合もあります。
- 言葉が出ず困っているようすの時には、こちらから質問をし、気持を確認します。「はい」「いいえ」で答えられるように質問しましょう。
- ざわざわした所では、聞き取れない人や落ち着かなくなる人もいるので、静かな場所を選んで話をします。
話しかける時の対応ポイント
- 笑顔でゆっくり、やさしい口調で声をかけます。
- 強い口調や責めるような口調、怖い表情やとがめるような表情はしないようにします。
- 声は、困っている人の前からかけます。後ろから声をかけるとびっくりしてパニックになってしまう人もいます。
話や説明をする時の対応ポイント
- たくさんの事を一度に言われるとわからなくなってしまうので、ポイントを絞って、ゆっくり、はっきり、短く、具体的に話します。
- 注意するときは「~してはいけません」という否定的な言葉ではなく、「~しましょう」という肯定的なことばでやさしく注意します。
- あいまいな表現は苦手なので、分かりやすい言葉に言い換えます。
×「もうちょっと」 → ○「あと5分」
×「あそこ」 → ○「黄色の柱」 - 内容を理解しているか確認します。(復唱してもらうなど)
- 伝わっていないと感じたら、ポイントを繰り返し伝えます。実物・写真・絵などを見せ、視覚的に分かるように伝えます。
- 一度に覚えられない人もいるので、大切なことはメモに書いて渡します。
- 困っている人の顔をよく見て話します。
災害時の発達障害児・者支援について
被災地における、発達障害のある人やご家族の生活には、発達障害を知らない人には理解しにくいさまざまな困難があります。 そんなとき、発達障害児・者への対応について少しでも理解して対応できると、本人も周囲のみんなも助かります。
対応のコツ
発達障害のある人は、見た目では障害があるように見えないことがあります。対応にはコツが必要です。
コツの探し方:家族など本人の状態をよくわかっている人にかかわり方を確認しましょう。
周囲の方へ
家族へのサポート
災害の影響で子どもと家族が離れられなくなる場合や、避難所の中で理解者が得られない場合などに、家族のストレスは高まります。
- 配給や買い物、役所や銀行などの手続きに困っている場合
- 水や食料、毛布などの配給時に、ずっと待っていられないで騒いでしまう子どもがいた場合
家族の代わりに子どもの相手をしたり、発達障害の特性を家族の了解のもとで周囲の人たちに説明していただくと、家族は大変助かります。
協力者の確認
発達障害のある人は、ひとりひとりの健康状態や、ストレスの蓄積につながる状況などがさまざまで、対応方法が見つけにくいことがあります。
個別的な配慮が必要になる場合は、周囲に本人をよく知っている人がいるか、その人は対応に協力してもらえそうかを確認しておく必要があります。
ご家族の方へ
子どもは、他人に起こったことでも自分のことのように感じることがあります。
さらに発達障害がある場合には、想像以上の恐怖体験になってしまうこともあります。
子どもには災害のテレビ映像などを見せずに、別のことで時間を過ごせるような工夫をすることが必要です。
災害を経験した子どもは、災害前には自分ひとりでできていたこともしなくなったり、興奮しすぎてしまうことがあります。
発達障害がある場合でも、基本的には子どもの甘えを受け入れてあげるのがよいでしょう。
叱ったりせず、おだやかな言葉かけをしながら、少しずつ子どもが安心できるようにすることが大切です。